このページでは、ものづくりの現場や生産ラインにおける目視検査の概要や、目視検査の効率化を目指す上で解決すべき課題、またパーツフィーダの導入によって目視検査を効率化するポイントなどをまとめて解説しています。
目視検査とは生産工程における品質検査の方法として、作業員の目でワークの異常や不具合の有無を確認する検査方法です。人の目で見て問題点を確認するため、事前にプログラムなどで登録されていないような不良や不具合でも経験則によってチェックし、不良発生を防止することができます。
一方、目視検査はどうしても作業を担当する人のスキルや経験といったものの差によって速度や正確性に差が生じることも事実です。
目視検査が人の目で品質検査を行う方法の総称であるのに対して、外観検査とは文字通り、品質検査において外観をチェックすることで不具合や不良の有無を確認する方法です。目視検査の場合、外観だけでなく動作状況や内部の様子までチェックして品質検査をすることがありますが、外観検査では基本的に変形や汚れ、欠損など外側から視覚的に確認して判断できる内容が検査対象となります。
目視検査には、品質検査を生産ラインの中に組み込むインライン検査や、生産ラインから独立させて行うオフライン検査、対象となるワークの全てについてチェックする全数検査、さらにはランダムでワークを抜き取って確認する抜取検査など方法や対象によって複数の種類が存在しています。
インライン検査とは、品質検査の工程を生産ラインの中に組み込んで行う検査方法です。インライン検査を行うメリットには生産工程の1つとして品質チェックを行えるため、工期を短縮してスムーズな品質検査を行ったり、全数検査を行いやすかったりといったものが挙げられます。
一方、作業員のスキルなどによって見落としが発生する場合もあり、どうしても属人性や人件費コストが高くなってしまうことがデメリットです。
なお、品質検査システムなどを導入して自動化することも可能です。
オフライン検査は生産ラインから独立させて品質検査を行う方法であり、作業員が顕微鏡や拡大鏡、デジタルカメラなどを使ってインライン検査よりも詳細に品質チェックを行うことが一般的となっています。
オフライン検査は流れ作業の一環で品質検査を行わないため、正確性を高めやすくなる反面、どうしても作業時間が長くなりやすく作業現場も別途必要です。
一般的にオフライン検査は抜取検査に適しています。
全数検査とは文字通り、対象となるワークの全ロットを検査する方法です。全てのワークを目視によって検査するため、生産品の中に不良品や不具合品が混ざっていた場合も発見できる可能性を高めることができます。
反面、全数検査では生産品の種類や数量によって作業時間にも大きな違いが生じやすく、また作業員のスキルが未熟であれば全数検査を行ってもエラーを見落としてしまう可能性が残ってしまうといった点が課題です。
抜取検査とは、検査対象となるロットから一部の商品をサンプルとしてランダムに抜き取った上で検査する方法です。
抜取検査は多品種や多数のワークでも効率的にチェックしやすい反面、抜き取る数量や範囲は統計学的に判断されるもののイレギュラーによる不良や不具合が発生していた場合、どうしても検査漏れが発生してしまう可能性が残ります。
目視検査は作業員の目や作業スキルに頼った品質検査であり、検査の正確性を高めようと思えば必然的に検査員の育成が不可欠です。
しかし、目視検査を正しく行うためには細かい部分まできちんと品質チェックを行える集中力や作業を遂行するための責任感、良品と不良品を適切に見極める判断力や知識など、様々な能力と経験が必要になります。そのため目視検査の検査員は簡単に育成できるものでなく、どうしても信頼できる検査員を育てるには時間やコストが発生します。
どれだけ検査員を育成したとしても、属人性の高い品質検査の方法である以上、検査精度を均一化できないことも課題です。
また、同じ人でも体調などによって品質精度にムラが生じる可能性もあり、常に信頼できる品質精度を維持することは決して容易でありません。
加えて、どの程度の範囲で良品と不良品を区別するのか、事前に明確化しておかなければ個人の印象に検査精度が左右されてしまう恐れもあります。
産業用機械や品質検査用に開発されたロボットなどと比較すると、どうしても検査速度や信頼度で劣ってしまう可能性もあるでしょう。特に、事前のプログラムに従って24時間体制で自動的に外観検査などを行える品質検査システムやパーツフィーダと比べれば、マンパワーによって作業する目視検査は非効率になってしまいます。
反面、ロボットはプログラムの範囲外のエラーを検知しにくいといった課題もあるでしょう。
目視検査の精度や品質によって、販売された商品がその後に全回収になるといったリスクが増大します。また、目視検査は同じ作業を延々と繰り返すことも多く、長時間の作業によって検査員の集中力が低下しやすくなることも考えられます。
インライン検査では立ちっぱなしで多数のワークを検査し続けなければならないこともあり、休憩のタイミングや作業工程のバランスを考えなければ、エラー品が大量に発生してしまうといったリスクも増大しかねません。
目視検査の効率化アップや正確性の向上を目指す場合、まずは作業環境を見直すことが重要です。作業場の明るさや照明の色によって不良ポイントの見えやすさが変わってくるため、適切なライティングや作業スペースの位置、作業台の高さなどを整えることが欠かせません。
また目視検査に必要な機器がすぐに使用できたり、未検査品と検査済みの品をスムーズに分けられたりといった条件も作業の効率性に直結します。
その他、温度や湿度といったポイントも重要です。
製造ラインの生産性を高めようと思えば品質検査のスピードアップが不可欠ですが、検査員を焦らせて品質検査の精度を低下させてしまえば本末転倒です。
そのため、許容できる工期や生産速度をきちんと決めつつも、検査員が落ち着いて正しい品質検査を行えるように配慮することが大切となります。
なお、検査員の検査スピードは環境や個々のスキルによっても変わるため、本人に無理をさせずに検査スピードを向上できる方法を考えていくことが肝要です。
長時間の集中や同じ姿勢の作業によって、検査員の肉体的負担や精神的負担が増大します。また、高ストレス下では作業の集中力も低下してしまい、品質検査の精度も下がり、結果として検査員へのプレッシャーが増大してストレスがかかってしまうといった悪循環も発生します。
目視検査作業の肉体的ストレスや精神的ストレスを緩和するため、検査員がこまめに休憩できるようスケジュール管理を適正化することが重要です。
どのようなポイントによって良品と不良品を区別するのか、検査基準は最初に明確化しておかなければなりません。
目視検査はどうしても複数の検査員の目と知識によってエラーの有無が判断されるため、客観的に共有できる検査基準がなければ検査精度を均一化することは困難です。
検査基準を明確にしてマニュアル化しておくことは目視検査の第一段階であり、誰が見ても判断できるようなポイントを設けて基準化することが大切です。また判断に困った場合の対処法も決めておきましょう。
検査基準の数値化や定量化、明確化が難しい場合、良品の見本としてサンプルを置いておくことも重要です。
また、良品のサンプルだけでなく不良品例や不具合例といった「目視検査によって排除すべきワークのサンプル」も合わせて作成しておくことも望ましいでしょう。
なお、サンプルを参照する方法として、画像を共有したり写真にプリントしたり、または三次元的に確認できる仕組みを考えるといったことも大切となります。
目視検査の精度や作業速度がどうしても検査員のスキルと経験に依存するからこそ、適切な人材育成によって検査員のスキルレベルを高めていく取り組みも不可欠です。
また、目視検査の精度が高い作業員のスキルをマニュアル化して、第三者も効果的に学べるようにカリキュラムを作成したり研修制度を設けたりといったことも効果的です。
特に新しい製品や商品をチェックするような場合、検査員のマネジメントを適正化しておくことがポイントになります。
目視検査のインライン検査を行う場合、例えばワークがバラバラの向きで流れてくればそのたびに検査員が位置を整えてチェックするといった工程が増えてしまいます。そのためパーツフィーダによって整列供給し、検査しやすい環境を整えることは効率化を目指す上で重要です。
また、画像処理システムや品質検査システムが一体化されているパーツフィーダもあり、そのようなチェック体制を生産ラインへ導入できれば目視検査の自動化や効率化を目指すこともできます。
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