パーツの供給整列を行っている間に静電気が発生すると、ワーク同士が接着してパーツフィーダが詰まったり止まったりとトラブルに発展することがあります。このページでは、パーツフィーダと静電気の関係について詳しく解説していますので参考にしてください。
静電気と一口にいっても、日常的なものからカミナリのように大規模なものまでその種類は様々です。
世の中にある物質は全て「原子」で構成されており、原子にはそれぞれ「プラスの電気」と「マイナスの電気」を帯びた電子が同数ずつ含まれています。
しかし、物質同士が接触したりこすり合わされたりすることで、電子が原子間を移動して電気的な偏り(帯電)が生じることがあります。この時の電気が「静電気」です。
静電気が発生する原因としては主に「接触帯電」「摩擦帯電」「剥離帯電」の3パターンがあり、パーツフィーダで特に問題となるのは「摩擦帯電」とされています。
パーツフィーダの中でチョコ停や詰まりを生じさせる主な原因が、ワーク同士の摩擦によって発生した静電気(摩擦帯電)です。
パーツフィーダの振動によって整列供給されるワークは、パーツフィーダ内を移動しながらそれぞれ接触したりこすれ合ったりしており、この時の摩擦などによって徐々に帯電していきます。
静電気が生じると電子のバランスが乱れて、プラスに帯電したワークとマイナスに帯電したワークが磁石のようにくっついたり、またはパーツフィーダのコンベヤへワークがくっついたりといった減少が生じます。そして、そのまま静電気が解消されなければ徐々にワーク同士の接着が拡大していき、パーツフィーダの中で詰まりやチョコ停を引き起こすという仕組みです。
ワークによって静電気を帯びやすいワークと、静電気を帯びにくいワークがあります。
静電気を帯びにくいワークとしては、まず物理的に高重量のワークが挙げられます。これは、静電気が部品同士をくっつけようとする影響よりも、重さによる影響の方が大きくなるため、結果的に静電気の影響を受けにくいという理由です。
また、そもそも導電性が高く帯電しにくい金属部品や、表面が粗くて接触面積が少ない部品も静電気の影響を受けにくくなります。
静電気が蓄積しやすいということは、帯電しやすいということであり、つまりたまった電気が逃げにくいということでもあります。そのため、まずシリコンやPP、PEといった導電性のない絶縁性材料や部品ほど静電気も強くなりやすいことが特徴です。
この他にも、小さい部品や軽い部品、表面が滑らかで接触面積が大きい部品などは、静電気の影響を受けやすいこともポイントです。
静電気を帯びやすいか帯びにくいかは、ワークの素材や特性、形状などによって大きく左右されます。しかし、静電気が発生する根本的な原因は接触や摩擦などの物理的な影響であり、例えばパーツフィーダの振動の強度や範囲も静電気の発生へ影響する大きな要素となっています。
また、凹凸や平滑性といった部品の表面・形状が、静電気で接着しやすいかどうかに影響するからこそ、部品の表面の仕上げ加工などによっても静電気の発生率や影響の出やすさが変わることは重要です。
そのため、素材特性としてどうしても静電気を帯びやすいワークが存在する以上、静電気の発生を防いで適切なワークの整列供給を維持するためには、パーツフィーダなど静電気の発生原因へダイレクトにアプローチする対策を実施することが必要となります。
帯電防止スプレーを使用することで、一時的に部品やトラフ表面が導電性を有する膜でカバーされて、電子を通しやすくなり、静電気の発生を防げるようになります。そのため帯電防止スプレーは一般的な静電気対策となっていますが、一方で医薬品用途の部品などワークへの影響を回避しなければならない場面では、帯電防止スプレーを使うことはできません。
パーツフィーダの金属部分にアース線を接続して、電荷をアース線から逃がすことで機器全体の帯電を抑制することが可能です。ただし、アース線によってパーツフィーダの静電気は防止できても、パーツフィーダ内でこすれ合っている部品そのものの静電気を防止することはできません。
そのため、そもそも静電気が発生しやすいワークへの静電気対策としては不十分です。
一般的に水は電気を流しやすい物質だと知られていますが、ワークやパーツフィーダへ霧吹きなどを使って水気を与えてやることで、ワークや機器表面に付着した水膜が帯電防止スプレーの代わりとして電気を逃がして帯電を予防してくれます。また、作業室内の湿度を高めるといった方法も有効です。
ただし、湿度が高くなると雑菌の繁殖リスクも高まっていくため、食品や医薬品などの取り扱い時には注意が必要です。
タルクパウダーとは、タルク(滑石)を含有する粉末状の物質であり、化粧品やベビーパウダーなどにも使われています。タルクをワークへ塗布することで、ワーク表面がタルクに覆われることとなり、部品同士の接触する面積が少なくなって静電気が発生しにくくなります。
除電器(イオナイザ)とは文字通り、帯電した電気を除去するための装置です。具体的にはプラスの電子とマイナスの電子の偏りを中和して、電気的に中立の状態を保つことで静電気の発生を回避します。
そのためパーツフィーダの静電気対策として効果的ですが、定期的なメンテナンスによる性能維持が重要です。
パーツフィーダ内でワーク同士がフィーダへ張り付いてしまう原因は、必ずしも静電気だけとは限りません。しかし、パーツフィーダ内でワーク同士がこすれ合うことで静電気が発生し、プラスとマイナスの電荷に偏りが生じれば、それによってワークとパーツフィーダが接着してしまうことも日常的に起こりえます。
ただし、パーツフィーダの表面加工や状態によってワークがくっつく場合もあるため、まずは原因を正しく見極めた上で、それぞれの仕組みに適した解決策をプランニングするようにしましょう。
なお、そもそも静電気が発生しにくい環境で部品の接着が生じている場合、他の原因の可能性が高まります。
パーツフィーダへアース線を接続することで、パーツフィーダの帯電を防いで電気的な中立性を保ちやすくなることは事実です。しかし、アース線によって電気を逃がせるのはパーツフィーダに関してだけであり、パーツフィーダの内部でこすれ合って帯電しているワークの静電気を完全に除去することはできません。
特に複数のワークが混合されているような場合、個々の帯電状態が変わってワーク同士が貼り付きやすくなることも考えられます。
帯電防止スプレーは、スプレーに含まれている成分によってワークやパーツフィーダの表面をカバーして、一時的に導電性に優れた皮膜を形成するためのアイテムです。そのため、皮膜が維持されている間は静電気を防げますが、ワーク同士や、ワークとパーツフィーダがこすれ合って皮膜が剥がれれば、再び静電気を発生させやすい状態へ戻ってしまいます。
帯電防止スプレーは永続的に効果を発揮できるものでなく、あくまでも一時的な対策として理解しておきましょう。
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